「学校行かないカモラジオ(カモラジオ)」第30回は、はるやゲストハウス(Haruya Guest House)の藤村ゆみえさんをゲストに迎え、「びわ湖源流の森のそばにある、はるやゲストハウスの暮らし」をテーマにお話を伺いました。滋賀県高島市朽木の小入谷で、自然に根差した暮らしを営むゆみえさんの日常や、山奥での暮らしの知恵についてお聞きしました。
藤村ゆみえさん
滋賀の朽木ではるやゲストハウス(Haruya Guest House)を営みながら、「足元からの楽園づくり」をテーマに自然に根差した暮らしを実践している。学校に行く・行かないの枠を超えた子育てを行い、ホームスクーリングも経験した。
Instagram(haruyaguesthouse)|Airbnb
三つの県が交わる山奥の集落で
井ノ口ではゆみえさんに簡単に自己紹介をお願いします。
今は滋賀県と京都府と福井県の三つの県が交わるような山奥の集落の一番奥に住んでいます。朽木の小入谷というところで、ゲストハウスを営みながら、自分の足元からこの場所を、縁あってここに住まわせてもらってるんですけど、この場所をコツコツと整えています。



今はちょうど10月、9月末なので秋の花がたくさん咲いてますね。
荒れ地から生まれた山野草の楽園
ここに私たちが来るときは、本当にもう荒れ地だったんですね。シダ類とか、つまり鹿が食べない植物だけの荒れ地。ヨモギやたんぽぽすらなかったような。それをまず私たちが住む場所をネットで囲み、少しずつその範囲を広げていったんですけど、2年目、3年目くらいから、ここに本来あった山野草が出てくるようになったんですよ。



ネットで囲むと、鹿が食べに来れないし守られてる感じですね。
そうです。「こんなところにお花があって、これ何?」という感じで。結構希少な山野草だったりするんです。つまり鹿が食べていたから、土の中では根っこがずっと生きていたんだな、と思って。そのうちにこんな木、植えててないのに!というような、様々な木がニョキっと生えてきたんです。それは私が木の実を食べたり、山から持って帰ってきたり、下に投げてたところから出てきたり、あとは小鳥が種まきしてくれていたみたいで。今も鳥の声がいっぱいしているんですけど、植物と小さな生き物たちの複雑な繋がりがだんだんと見えてくるようになって、ものすごく豊かになってきました。
以前は山菜を取るのに、森とかどっかよそに行かなくちゃいけなかったんですけど、今は自分の庭をウロウロしていたら、折々に何かしら食べるものが得られるようになりました。



すごい!食べられるものまで庭で採れるようになったんですね。
それから美しいものが見られるし、去年、一昨年くらいから感じたのは、香りを楽しめるようになったんです。カツラの木は朝になったらすごく香ります。それから藤袴という花があるんですけど、もうすぐしたらアサギマダラが旅の途中に来てくれると思うんです。藤袴も香りが強いです。
夏はオオバユリが夜になるとものすごく香るんですよね。もう本当に南国のようなトロピカルな香りです。そういう折々の植物の何かで、香りも楽しめる庭になってる。もうここを出る必要ないみたいなサンクチュアリみたいになってきました。



食べて、見て、香りまで楽しめる庭になったんですね。他にも動物たちがいるんですよね。
動物たちとの暮らし—犬、合鴨、鶏
動物たちも、だんだん増えてきました。犬はいらんかって言われて、仔犬をもらったんですけど、この場所だったら単なるペットというよりは、この家族のために自分の役割を自分で感じて、この土地を守ってくれる犬になりました。彼女がいるからこの庭がこうやって健やかに守られてるという感じがします。
合鴨もいて、合鴨は初めて私の意思で、水鳥と一緒に暮らしたいと思ったんです。なぜかというとここは琵琶湖の源流で、水が本当に清らかで綺麗なんですね。野菜を洗ったり、夏はもうシャワーの代わりになったり、子供たちも小さい頃はもう1日何回も川を往復して遊んだりしていたんですけど、それを一緒に楽しめる生き物がいたら楽しいだろうなと思って。合鴨というのがいて、それを雛から育てました。
それから鶏が3種類いるんですけど、あまり卵を産まないというか、保護鶏みたいな感じで。生き物がたくさんいるようになったんですけど、野生の鳥たちも、植生が豊かになったからいろんな渡り鳥とか、旅の途中に寄ってくれる鳥とか、本当に様々な種類がいて楽しいです。
家族で建てた家、清らかな水の恵み



このおうちも、ご家族みんなで建てたんですか?
そうですね。棟上げとか難しいところは大工さんにやってもらったり、大工さんと一緒に作業したりだったんですけど、結構家作りって小学生の子供ができるようなところもあって、塗ったり、壁を貼ったり、外壁を貼ったり、そういうのはどんどん子供たちにもやってもらいました。学校を休んでても、やりたい子にはやってもらって。1年半かかったんですけど、立ちました。まだ未完の部分があるんですけど、やっぱり家族の住む家だからね。すごく適当なところもあるんですけど。



暮らしの中で、ガスとか水とか電気とか使うと思うんですけど、それはどういうふうに?
この場所は簡易水道なんですけど、水道管がここまで通ってなくて、土を掘るしかなかったんです。掘ってもらったら美味しい伏流水が出てきたんですよ。それはもう一番の私の自慢です。ゲストの方にも自慢しているんです。「どの水も蛇口をひねってもミネラルウォーター美味しいのが出てきます」って。
電気は使っていますね。ただ簡易的な蓄電器とソーラーパネル、移動できるバッテリーを購入して、非常時のために導入しました。どちらかというと、ゲスト滞在されるお客さんのために、できるだけ不自由させてしまうというのがないように導入しました。土地柄、停電とか多いんです。



そうですね。
停電1週間で気づいた「丁寧な暮らし」
私たちは長くて1週間くらい停電のときがあったんです。台風のときでも、すごく楽しかったんですよ。リトリートみたいな感じで。やっぱり昔って、ろうそくの明かりで、焚き火で食べ物を作ったり、速さがゆっくりだったんでしょうね。一度にいろんなことできないですよね。
みんな大体同時に二つ以上のことをしてるんじゃないかな。音楽を聞きながらご飯を炊いて、味噌汁を作ったり、三つやってるでしょ。やっぱり電気の力で結構いろんなことを同時進行するというのが普通にあるんじゃないかなと思うんです。
停電になったら一つ一つやっていくしかないでしょ。夜はロウソクの明かりで見える範囲のことしか、物事が進められない。丁寧になるんですよね。その明かりの中で、何をするにも、ローソクを節約するかみんな集まってくるし。これは大事な経験ができたなと思って。



確かに。水はどうしてたんですか?
水も汲み上げるのが結局電力なので、沢に汲みに行ったり。その次のときはもう沢からどんどん水が流れるようにみんなでパイプをつなげてやったんですけど、そこで洗いもできるし。外でドラム缶風呂とか、薪でできるし何とでもなったんですよ。都会で停電だったら大変でしょ。トイレとかもね、トイレが一番大変って聞いたんですけど、全然そんなことなかったです。薪ストーブで温かく過ごせるし。あれは本当いい経験でした。
ある時ぽっと電気がついて「なあんや」という感じなんです。慣れてきたところやのに、と。(笑)パソコンとか使えないから、仕事とか打ち合わせとか、そういうのすぱっと切れるんですよ。それもすごく楽というかね。どうしようかなとか、そんなん言っても仕方ないし、すぱっと切れるというのはよかったですよ。音楽もピアノとかギターとか、電気なしでできるからね。娯楽もたっぷりあるし。
「不便で便利」—山のおじいさんたちの言葉



田舎の暮らしっていうと「不便」だと言うと思うんですけど、こういう生活を見ていると、もちろん都会の特有の便利さみたいなものはなかったとしても、災害が起こったときにもしなやかに暮らしを続けられるような、ある種の便利さというか、知恵みたいな物がたくさん詰まってるなって。
地域のおじいさんおばあさんたちも停電があったんですけど、全然どうもなかったです。普段から蓄えはあるし、食料を切らすことをしてなかったですね。みんなね。



すごいですね。
「便利なとこや」とおじいさんたちも言ってました。



見方が全然違うんですね。
そうなんです。昔は歩いて小浜に行ったり、京都に行ったり、自分の足で生きていたでしょ。それがある時からバスが1日に数本しかないけどもあるし、自分で運転したらどこでも行けるし。
でも、ほとんど家探したりしてる人たちはここは「不便やな」って、逆の印象やと思うんですよね。おじいさんたちからしたら便利なとこやって当たり前のように言ってはって。それが印象的でしたね。
足元から整えることの大切さ



最後に総括として、ゆみえさんが暮らしの中で、どんなことを大事にしてるか聞いていきたいです。
息子たちが植物のこととか野鳥のことをすごく詳しく勉強していて、教えてくれるんです。おかげでいろいろ見えるようになりました。生き物と植物の繋がりとか。この場所、外の場所ってすごく荒れてるのが現状なんですよね。知れば知るほど、私の手の届くとこを、本当に整えていって、野鳥たちの餌場とか、ちょっと旅の途中で休む場所とかにしていきたいなと思います。
生き物たちが心地よい場所なら、人間たちもすごく元気をもらうんじゃないかな。例えば、ゲストの方にもね。自然からたくさん教えてもらっていますね。大事なことばかり。
まとめ
今回は、滋賀県高島市朽木の小入谷で、はるやゲストハウスを営む藤村ゆみえさんに、山奥での暮らしについてお話を伺いました。鹿の食害で荒れ地だった土地をネットで囲み、山野草や野鳥が戻ってくる「サンクチュアリ」をつくりあげたゆみえさん。停電を「リトリート」と楽しみ、地域のおじいさんたちが「便利なところや」と語る、不便の中にある豊かさが印象的な回でした。









